第三の男 〜ジョニーウォーカーとメルセデス〜

今日は4時間半。
で明日は6時間。
往復計21時間…。


騎乗鞍もとめて片道4、5時間ドライブなんて、ウチらジョッキーには当たり前のことやけど、しかし2日連続というのは辛い。
運転だけでもしんどいのに、これが減量せなあかん場合はウンザリする。
飲み食いできないうえに、競馬場ついたら厚着してジョギングやからな。
考えただけで吐き気がする。



ヒルダ騎手が突如壊れはじめたのは、車がポートピリーの街にさしかかった時でした。


後部座席にすわっていた彼、明日のレースのために今から2kg減量する必要があると言う。
その多大なストレスについに耐えきれなくなったのだろうか。


「ちょっと、そこのボトルショップで止めろォ〜」


と言うなりジョニーウォーカーの6パックを買って来て、そのうちの2缶を飲み干しました。
…あーぁ、2kg減量が3kgになっちたよ〜
もうそれで完全にイッてしまった彼は、なんだかもうブレーキきかなくなりました。


「車の窓開けて、こっからピス(小便)してもいいか?
いいか!?」


おっ、おい!女の子ジョッキー2人いてる前で何言いだすねん、しかもこの車はB騎手のベンツ!
やめれ〜!
と何とかそれは制止したものの、次に彼がとった行動は、携帯でジョッキーにイタズラ電話をかけるというもの。
スター騎手からローカルな人、さらには女の子ジョッキーにまでも、手当たり次第にダイヤルしまくり、


「こないだR騎手を控え室で殴ったって本当デスカっ?!」


「B騎手とアヤシイって噂ですが、…ずばりヤッちゃいました?!」


などとキワどい質問で大胆に攻めまくるSヒルダ騎手。
キワどい、つうか線越えてるよな?


あのテレビで見てる憧れのアイドルKダイソン騎手やSロウィラー騎手と生電話、となるとこっちもテンション上がるわ。
問答無用でガチャンと切られるケースも少なくなかったけど、意外にもみんな相手してくれます。
そんな中で一番イイヤツだったのがPハミルトン騎手。
かつてはLフリードマンの見習いとしてトップで活躍した彼が、Sヒルダのイタ電に20分以上も付き合ってくれたのでした。
あっちもヒマやってんやろな。
その彼にSヒルダがふとこんな質問を…


「おいっ、じゃあアデレードmaki-moritaって知ってるか?!
実際あいつはどうだ?
上手いジョッキーか?!」


いっ、いきなり何を聞いとんねん。
し、しかし彼がどう答えるかは非常に気になる!
…果たしてPハミルトン騎手の答えは、


「ん?あぁマーキーモリータ…?
んー、彼はナンバースリーだね…。」


ナンバースリー!
微妙な評価!
三位、銅メダルってことですか?!
それとも三流のダメジョッキーってこと?!
それとも…何やねん?!


…まぁ実際はmaki-moritaなんて名前、聞いたこともなかったんでしょう。
ええヤツやから、適当に合わして答えてくれたんやな。
しかしナンバー3ではマズイよな。
せめてナンバー2と言われるように、これから頑張るわ〜。