この愛に泳ぎ疲れても
いつかは落ちると思ってたけど…ついに落ちました。
ビーチで落馬。
波打ち際や水の中を歩かせることは、馬の脚元だけでなく精神面にも良いということで、ウチの厩舎では毎朝4頭ほど連れて行きます。
しかし今朝はいつになく波が高くて荒れ模様。
こんな時よりによって乗らされたのは、気性の激しさでは厩舎でも1、2を争うフレンチデピュティの2歳馬。
臆することなく水の中へと入って行くものの、高波が押し寄せるたびにウマっ気を出して立ち上がったり暴れまわる同馬。
でもその程度じゃ落ちるはずなかったのに、満ち干きしてる波打ち際の上では視覚でバランスがつかめず、あっと気付いたときには水の中へ
ザップーン
でした。
さーて大変なのはここから。
市街地のほうへと駆けて行くウマをぼーっと眺めてる場合ではない。
期待のフレンチデピュティの身に何かあれば…!
というわけで元副部長、走りました。
全身ずぶ濡れ、おまけに目には海水入って焼けるように痛いけども構ってられん。
とにかくダッシュ!
しかし馬を追ってそこの角を曲がると…馬がいない。
しまったあぁ見失ったかぁ!?
頭ん中真っ白。
で、ふと横を見ると、そこの民家の庭で草喰ってました。
あ、あんたね…
人んちに勝手に入っちゃだめでしょ!
さっきまで浜辺であんなに興奮してたのに、今は口をもぐもぐさせて何事もなかったようなカオしてる。
憎めんやつや。
というわけで連れて帰りました。
ビーチに戻ると、調教師は半ギレの表情やったけど、全身ずぶ濡れ砂まみれの自分を見て怒る気も失せたのか
「明日はオレが乗る…」
とだけ言いました。
この期待のフレンチデピュティ産駒、名前はチラック。
米のチャンピオンスプリンターと名前が似てるけど、この馬も短距離で相当活躍できそうな逸材。
フレンチらしく力強い体格をしながら、筋肉がすごく柔らかくて動きがしなやか。
来週デビュー予定。